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この文章は、七日から九日まで、ドイツ・アーヘン市で開催された「世界宗教者による平和の祈りの集い」の席上、宝積玄承氏が発表したものです。



 私は日本から参りました禅仏教徒であります。「世界宗教者による平和の祈りの集い」は今年は伝統あるドイツのアーヘンの街にやって参りました。

 20世紀は戦争の時代であり、21世紀こそは平和の時代になるようにとそれぞれの宗教者が祈り、そのことにお互い頑張っておりますが、この世からテロは無くならず戦争は止んでおりません。

 人間の業、罪というものでしょうか。平和は向こうからやってくるものではありません。自らの即ち、自分の心からやってくるものであります。お互いこの世に生まれて来た一人一人の心の中から平和は生まれるものであります。

 我が心の平和なくして社会の平和は望めません。自分の心の中に人間として静かなおちつきがあり、真理に目覚めなければなりません。

 私も禅仏教徒として、この世に生まれて来た一地球市民として、真剣に考えて、生きようと努力しております。それでも、この地上に平和はなかなか実現して参りません。

 自分を憂い、共に生きている他者を憂い、ある時は悲しみ、ある時は苦しみ、自分を責め、自分の宗教を問い、これでよいのかどうかを点検しているのであります。

 ローマ教皇 ヨハネ・パウロ二世猊下のアッシジの平和の精神を大切にして、この地球上にこの人類社会に平和が実現すべく願っている一人であります。

 生命の尊厳、地球環境の問題、エネルギー、核兵器、国家民族の争い、宗教・文化との対立、貧富の問題等、数えきれないほど沢山の問題が現実に横たわっております。

 今やこれらの問題を無視して生きていくことはできません。これら諸問題に向かって人間を問い、自分を問うて生きていかねばなりません。そこにこそ、現代人の人間としてどう生きていくのかという課題が必要になってくるのであります。

 人間は社会的生き物であります。社会の人たちと国家民族との対立を超えた理念のもとに生きることが大切であります。そこには、お互いの宗教をよりよく理解して行動することから始めなければなりません。

 そこに宗教者として、あるいは真の人間として対話を尊重しなければなりません。宗教対話は現代人にとって今こそ大切な時であります。

 エディジオ共同体によってなされているこの「世界宗教者による平和の祈りの集い」はもっとも時代にふさわしい活動であります。

 こういう機会に参加させていただいている私は、主催者の皆様を尊敬し、心から感謝をしているものです。

 40年前、教皇ヨハネ23世は「地上の平和」(Pacem in Terris)と名づけた手紙の中で平和は四本の柱で支えられている建物のようだと述べておられます。

 その四本の柱とは真理、正義、愛、自由です。世界の平和への道はどの一つを欠いてもいけません。この四つが大切なのです。

 真理、正義、愛、自由を理解する人があってもこれに向かって実践していかねば、理論だけではこの世に平和はやって来ません。

 インドのマハトマ・ガンジーは、「七つの社会的罪」(Seven Social Sins)と説かれました。

1.理念なき政治(Politics without Principles)

2.労働なき富(Wealth without Work)

3.良心なき快楽(Pleasure without Conscience)

4.人格なき学識(Knowledge without Character)

5.道徳なき商業(Commerce without Morality)

6.人間性なき科学(Science without Humanity)

7.献身なき信仰(Worship without Sacrifice)

 非暴力を強く主張したマハトマ・ガンジーのこの精神活動は、人類への普遍的な問いかけであります。私は他宗教から沢山のものを学び、禅仏教徒として生きております。

 アッシジの聖フランチェスコの平和の精神、一本一草に心をよせる聖者、小鳥にも小さな動物にも愛の精神をもって生きた聖者、貧者を友として、清貧に甘んじ謙遜と貞潔に生きた聖者を慕っております。

 今年の3月1日にこのアッシジの聖地に日本の伝統文化の一つである、水琴窟を贈呈することができました。

 水琴窟は日本の京都の町家の中庭にある手洗いの排水工事のもので土で焼いた壷を地中に埋め、上から水一滴一滴のしずくが、この壷の中で琴のような美しい音を出し、その音を聞いて心を平和にし、いやす働きをもっているものです。

 ほんとに静かなこの音色は聞く人の心に平和な心を与えるものです。この水琴窟を贈呈することが水琴窟を愛する人たちによって出来ました。

 平和な心の一しずくがアッシジから生まれることを支援するものであります。人類の平和を祈って、つたない私のメッセージを終ります。ご清聴ありがとうございました。




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